内部公益通報窓口を顧問弁護士が兼ねるのはもう終わり?

 

弁 護 士 大 谷 龍 生

(東京弁護士会所属) 


この記事の要点(目次)


1.ご存知ですか?消費者庁の推奨

 

(1)前提 - 内部公益通報窓口の設置義務と設置場所

 

 公益通報者保護法に基づく指針は、常時使用する労働者の数が301人以上の企業に、内部公益通報窓口の設置を義務付けています。また、その労働者の数が300人以下の企業では努力義務とされています。

 消費者庁は、この内部公益通報窓口を外部に設置することを認めています。平成28年に消費者庁が行った調査の結果によれば、内部公益通報制度を導入している事業者の59.9%が社内外いずれにも窓口を設置しており、他の7%が社外のみに窓口を設置しています。

 

(2)消費者庁の推奨 - 内部公益通報の外部窓口を顧問弁護士が兼ねることの問題

 

 消費者庁は、内部公益通報の外部窓口を顧問弁護士が兼ねることの懸念点に留意し、その懸念点を解消する方策を採ることを推奨しています。

 この推奨は、消費者庁が開催した検討会の委員である学者や弁護士、事業者団体関係者、消費者団体関係者、労働組合連合会関係者等がまとめた報告を基にしていますので、多方面において共通する考え方といえます。

 それはなぜなのでしょうか。

 内部公益通報窓口は、企業の内部統制システムの一環として、事業や経営の不正を発見するためのツールであり、これにより企業自身の自浄作用が図られるべきものです。

 他方で、顧問弁護士は、企業に対して事業や経営に関する法的な助言や支援等を継続的に提供する者ですので、事業や経営を進める側に近い存在といえます。

 そのため、内部公益通報の外部窓口の業務にあたり、通報の秘密を厳守する観点、中立性・公正性・独立性に疑義を生じさせない観点、事案関係者との利益相反を排除する観点等から、その外部窓口を顧問弁護士が兼ねるのは好ましくないと考えられています。

 

 

2.消費者庁の推奨を踏まえた対応に遅すぎることはありません

 

 ところが、平成28年に消費者庁が行った調査の結果によれば、内部公益通報の外部窓口を設置している事業者の49.2%、つまり約半数もの企業が外部窓口を顧問弁護士に委託していました。

 そして、この調査から5年が経った令和3年に、先ほどご説明しました消費者庁の推奨が公表されました。

 そのため、この5年間において、内部公益通報の外部窓口を顧問弁護士が兼ねることに疑問を持つのは難しかったかと思います。

 とはいえ、消費者庁の推奨が公表されてからそれなりの期間が経っています。

 今からでも遅くありませんので、消費者庁の推奨を踏まえた対応を始めましょう。

 

 

3.内部公益通報の外部窓口を顧問弁護士以外とするシンプルな方法

 

(1)内部公益通報の外部窓口の設置状況

 

 平成28年に消費者庁が行った調査の結果によれば、内部公益通報の外部窓口の設置場所は、以下のとおりです。

① 49.2% 顧問弁護士に委託

② 22.7% 親会社や関連会社に設置

③ 21.6% 顧問でない弁護士に委託

④ 14.9% 通報受付の専門会社に委託

⑤  1.9% 労働組合に設置

⑥  4.4% その他

 

 では、内部公益通報の外部窓口を顧問弁護士以外のどこにすればよいのでしょうか。

 それは、企業が内部公益通報の外部窓口に何を期待するかによって変わってくるはずです。

 

(2)内部公益通報の外部窓口を弁護士以外とすることの盲点

 

 内部公益通報対応は、通報を受け付けて終わりではありません。通報を受け付けたら、必要な調査を実施しなければなりません。また、場合によっては、調査結果を踏まえて是正に必要な措置をとったり、その措置が機能しているか否かを確認したりする必要があります。

 これらの対応を行うにあたっては、公益通報者保護法やこれに基づく指針はもちろんのこと、通報内容に関連する刑法、その他の犯罪を定める各種法令、民法や会社法、労働基準法、その他の法的義務や責任を定める各種法令、これらの法令の適用の前提となる事実の認定や評価、裁判その他の法的手続の実務等について、法的に十分な知識や能力等が必要となります。 

 ところが、親会社や関連会社、通報受付の専門会社、労働組合は、これらの知識や能力等を十分に有することが国家資格により担保されていません。

 そのため、これらの会社等が内部公益通報の外部窓口となった場合、通報を受け付けること自体は期待できたとしても、その後に企業が行う調査や是正措置にあたり、適法かつ適切な助言や支援等を受けるのを期待するには無理な面があります。

 また、万一、内部公益通報の外部窓口となったこれらの会社等が問題を起こした場合には、国家資格のない者を外部窓口とした選任責任が問われるおそれを否定できません。

 

(3)内部公益通報の外部窓口を弁護士に委託するカギ

 

 そこで、国家資格によって一定程度の知識や能力が担保されており、限定無く法律事務を取り扱うことが認められている弁護士を外部窓口とすることが考えられます。

 ただし、弁護士であれば誰でも適しているかといえば、もちろんそうではありません。

 多くの弁護士は紛争の予防や解決を中心として取り扱っていますが、他方で、内部公益通報窓口は、企業の内部統制システムの一環ですので、両者の性格は大きく異なります。

 そのためか、弁護士といえども、内部公益通報窓口の経験を有する者は多くはありません。平成28年に消費者庁が行った調査の結果によれば、内部公益通報の外部窓口として顧問でない弁護士に委託しているのは、事業者全体の僅か6.7%に過ぎません。

 また、多くの弁護士が有する紛争の予防や解決に関する経験は、大きく性格が異なる内部公益通報対応には流用しにくい面があります。

 さらに、万一、内部公益通報の外部窓口となった弁護士が問題を起こした場合には、経験のない弁護士を外部窓口とした選任責任が問われるおそれを否定できません。

 そこで、内部公益通報の外部窓口を、顧問弁護士以外の経験ある弁護士とすることが適しています。

 これにより、企業としては、内部公益通報の外部窓口となる弁護士と、通報の調査や是正措置について法律相談をしたり助言や支援を受けたりする弁護士とを一本化することができますので、シンプルな制度設計が可能となります。

 

 

4.内部公益通報(+ハラスメント相談)の外部窓口をお任せください

 

(1)内部公益通報の外部窓口等の経験

 

 当職は、内部公益通報の外部窓口の経験があり、これに積極的に取り組んでいます。

 また、内部公益通報窓口は、企業の内部統制システムの一環であり、これにより企業自身の自浄作用が図られるべきものですが、この点で、企業の不祥事が起きた場合に設置され得る第三者委員会と共通しています。当職は、上場企業の第三者委員会の委員を務めた経験もあります。

 もちろんその他にも、刑事上、民事上、行政上の法的義務や責任に関する裁判等の経験が10年を超えており、相当程度多数に及んでいます。

 

(2)内部公益通報の外部窓口業務の概要

 

 ご提供する内部公益通報の外部窓口業務の概要は、基本的に以下のとおりです。

① 内部公益通報の受付

② 通報者に対する受付の連絡

③ 企業から指定を受けた会社内部の従事者に対する報告

④ 会社内部の従事者が行う調査に関する法律相談に対する回答

⑤ 会社内部の従事者が作成する報告書の確認や一部修正

⑥ 企業が行う是正措置に関する法律相談に対する回答

⑦ 通報者に対する対応結果の通知

⑧ 内部規程の作成や修正、従事者の指定、その他の内部公益通報制度の構築に関する助言及び支援(研修は別契約による)

 

(3)付帯する業務 - ハラスメント相談の外部窓口業務

 

 全ての企業は、以下の各ハラスメントに関する各法律及びこれに基づく指針により、ハラスメント相談窓口を設けることが義務付けられています。

① セクシャルハラスメント(セクハラ)

② パワーハラスメント(パワハラ)

③ マタニティハラスメント(マタハラ)

④ パタニティハラスメント(パタハラ)

⑤ ケアハラスメント(ケアハラ)

 

 ところで、消費者庁は、内部公益通報窓口がハラスメント相談窓口を兼ねることが可能であると認めています。

 これは、両窓口は異なる目的により設置されるもののため全く同一ではないものの、共通する部分が多いからといえます。

 そこで、内部公益通報の外部窓口業務に付帯して、ハラスメント相談の外部窓口業務をご提供いたします。なお、当職は、ハラスメント相談の外部窓口の経験があり、これに積極的に取り組んでいます。

 ハラスメント相談の外部窓口業務の概要は、先ほどご説明しました内部公益通報の外部窓口業務と基本的に同様です。

 そのため、ハラスメント相談の外部窓口業務の弁護士報酬は、以下でご説明します内部公益通報の外部窓口業務の弁護士報酬に含めています。

 

 

(4)外部窓口業務の提供対象地域

 

 外部窓口で通報や相談を受け付ける方法は、メール又は郵便です。

 そのため、東京に限らず、日本全国の企業様へのご提供が可能です。

 

(5)外部窓口業務の弁護士報酬

 

 内部公益通報の外部窓口業務の弁護士報酬は、基本的に、業務の範囲に応じて以下の2パターンとなります。なお、ハラスメント相談の外部窓口業務の弁護士報酬を含めています。

 

【Standard:外部窓口業務の概要①~⑦】

常時使用する

労働者の数

基本報酬 追加報酬
~300名

 

月額3万3000円(税込)

(基準:年間6件)

 

左記の基準件数を超えた場合

6万6000円(税込)/超過1件

301名~1000名

 

月額5万5000円(税込)

(基準:年間10件)

 

1001名~3000名

 

月額7万7000円(税込)

(基準:年間14件)

 

 3001名~

 

 月額9万9000円(税込)

(基準:年間18件)

 

※ 既に内部公益通報窓口を設置している企業様にお勧めです。

 

【構築Plus:外部窓口業務の概要①~⑦+⑧】

常時使用する

労働者の数

基本報酬 追加報酬
~300名

 

月額3万3000円(税込)

(基準:年間6件)

 

+22万円(税込)

 

左記の基準件数を超えた場合

6万6000円(税込)/超過1件

301名~1000名

 

月額5万5000円(税込)

(基準:年間10件)

 

+ 22万円(税込)

 

1001名~3000名

 

月額7万7000円(税込)

(基準:年間14件)

 

+ 22万円(税込)

 

 3001名~

 

月額9万9000円(税込)

(基準:年間18件)

 

+ 22万円(税込)

 

※ これから新たに内部公益通報窓口を設置する企業様にお勧めです。

 

 なお、上記「内部公益通報の外部窓口業務の概要」記載の④~⑥の業務に関し、別契約により、調査、報告書の作成、是正措置を、貴社の内部従事者ではなく当職が自ら行うこともできます。この弁護士報酬は、個別の事案に応じてその都度協議させてください。

 

 また、別契約により、内部公益通報制度に関する研修を行なうこともできます。

 この研修の報酬は、1回当たり11万円(税込)です。

 

 

5.20社様限定です

 

 内部公益通報の外部窓口となる弁護士は、公益通報者保護法に基づき従事者と指定されますので、基本的に、その弁護士自身が対応を行う必要があります。

 そのため、現状では、当職が外部窓口業務をご提供できる企業様を20社に限らせていただきます。

 

 

6.まずはお気軽にご連絡ください

 

 内部公益通報の外部窓口のご依頼を希望される企業様はもちろんのこと、検討中の企業様も、興味を持たれている企業様も、お気軽に「お問い合わせ」からご連絡ください。

 打合せの日程調整、ご質問やご相談等に喜んで応じさせていただきます。

 なお、打合せの方法は、面談、オンライン会議システム(Zoom等)、電話のいずれでも対応可能です。

 

【追伸】
 この記事は、日本全国の企業様のうち、主に以下の企業様に向けて書いています。
  1.  既に内部公益通報の外部窓口を設置しているものの、その外部窓口を顧問弁護士に委託されている企業様。
  2.  これから新たに内部公益通報の外部窓口を設置しようとしているものの、顧問弁護士以外で、経験ある弁護士に縁のない企業様。

  さぁ今こそ、消費者庁の推奨を踏まえて、一歩先に進みましょう。

 

令和5年8月22日記事作成

同月23日,28日,29日,同年9月2日一部変更